何故私はここにいるんだろうー・・・
そう気がついた時には、私は金沢の地へ降り立っていた。
*
きっかけは、一通のメールだった。
「マイルの失効日が近づいています」。
無機質なPCの画面に写るJALのメール。
ご丁寧に通知を送ってきたのが全てのはじまりで、私の右手はすぐさまマイレージバンクのページへと私を誘った。
本当はその時、旅よりもAmazonが良かった。インターネット大手の方のAmazon。私は、ネットに広がる熱帯雨林的商店の方が好きだった。
ずっと狙っていた。
しかし、JALは私にこう告げた。
「不正アクセスを確認した為、Amazonギフトへの交換は現在停止中です」。
残酷だ。
天使のテーゼより残酷だ。
再開を予定していますって書いていたのに、未だ寸止め感MAXだ。
ていうか未だ再開を延期してますと表示している。
もう、終わりだね。
彼は、私の元へは来ないかもしれない。I know I'm not the only oneじゃないって、Sam Smithも歌っていた。私も、同じことを言う日が来たのよ。
だから、手を引こうー そう思った。
そうすると不思議なもので、私の元へいろんな男が言い寄ってきた。
「僕のところへおいでよ。美味しいワインを用意して待ってるよ」。
ご存知ないようだから教えておくわ。今のところソムリエやソムリエールなるワイン漫画を読んだし、城アラキ先生は大好きだけれど、ワインにはまだ興味がなくてよ。
「オレは、お前の電子マネーになる!」
そう言ってきた男もいた。彼は、WAONと言った。
しかし彼は知っているのだろうか、私の家の近所にはイオンもないし、WAONはあまり需要がないということを。
比較的魅力的だったけど、私からお断りした男もいたわ ーSuica特典。
確かに彼は言った、「日本は交通費がかさむって怒ってたろ?僕でよければ力になろう」。
ええ、私は常々交通費がかさむと言っていたし実際今も思っているし、っていうか私の収入の半分ぐらいを貢いでるんだから、その分返してよ・・・!そう思った日々もあった。
でも気がついたの。
せっかくの特典でしょう?
そんな現実的なモノを求めてる女がいないってこと、この男は気がついてるのかしら。
そう思ったら、いつの間にかSuicaはもう、私に言い寄ってこなくなった。
そんなときだった。
「K, オレにしろよ。オレを選んでくれたら、BOSEのノイズキャンセリングのヘッドフォンだって数千円で買えるんだぜ」
そう言ってきたのはビッグカメラのポイント交換サービスだった。
彼は「オレなら、お前の欲しがっていたRICOHのTHETAだってディスカウント出来るんだ」。そうも言った。
彼は、やたらと横文字の多い男だった。
大学のエデュケーションだけではパーフェクトではないと教えられてきたからこそ、こんなに横文字の多い男、大丈夫なのかしらと、懐疑的だった。
でも彼はとても、魅力的だった。
少なくとも、私の好みを熟知してるかのようだった。
でもー・・・
振りきれなかった。
私の中に突如現れた、アイツ。
一目惚れだった。
いや、会う前から、恋に落ちるとわかっていた ーそんな気がした。
そう思った時には、もうビッグカメラは私のことを追いかけなくなった。
そして私の右手が選んだ、アイツ。
JALグループ国内線特典航空券。
いわゆる、マイルで旅するってヤツ。
本当は、彼みたいな人にずっと憧れてた。そう、これだ!と・・・。
そして決めた。
「私、金沢へ行く・・・!」
「あなた、何しに行くの?」
もうひとりの私が尋ねた。
「わからない。」
「わからない? 誰かが待ってるとか」
「そんな、私のことなんか誰も待ってはいないわ。でも、行くのよ」
「何故、金沢なの!?」
「何故って・・・。」
「焦って決めなくても、まだ時間はあるわ。まだクラスJだって空席よ。だからほら、広島とか、秋田とかあるじゃない!」
ためらいがちに、しかしその声を断ち切るように、私はこう続けた。
「こういう機会でも無ければ、行かないかもしれないからよ。」
こうして、私は数カ所の行きたいところの目星だけをつけ、金沢への日帰りノープラン旅を進めていくのだった。
しかし、この時の私は知らない。
たまたま特典予約航空券を予約した月曜日は、お目当てのひとつである21世紀美術館が休館日だということをー・・・。
連続Blog小説「Youは何しに金沢へ」 第2話へ、続く!
*
(終わってないのに)編集後記: え、まだ続くの!?w
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