サクソフォンを鳴らすもの。
それは、リード。
(中略)
しかし時は流れ、今日ではその常識が覆されようとしていた。
(あれ?略し方雑だった??まぁ1話目から続けて読んでよ!)
この物語は、リードに踊らされる一人のサクソフォニストとリードの、出会いと別れを綴ったものであるー・・・。
登場人物:
K- サックス専攻の音大生。フジの10時台のドラマに出てきそうなめんどくさい仕立て。
ケーンのリード- 10本で3000円弱の草食系リード。
レジェール- 1本で3000円程度の樹脂系リード。
男女- 薄暗いバーカウンターで夜な夜なよもやま話を繰り広げる二人組。
`・ω・´
日付が変わろうとしている頃。男女が薄暗いバーのカウンターに居た。
「リードに踊らされる、か。赤い靴の話を思い出すな。」
男がそう言うと、右手に持ったグラスから乾いた氷の音がした。
「アンデルセン?横浜で走ってるバス?」
「前者だ。サックスを吹くっていうのは、赤い靴を履いて踊り続けるカーレンのようだな。カーレンは最終的に両足を切断され、そしてその後も赤い靴を履いた両足は彼女を置いて踊り続けるんだ。」
「それは・・・ 彼女がサックスをやめるまでずっと踊らされ続けるっていうことの比喩かしら?」
一つ咳払いをしたあと、男が答えた。
「だがな、あいつなら、彼女を救える気がして、な。」
「あいつって・・・」
「あいつだよ。」
そう言って男はグラスに入ったマッカランを飲み干した。
`・ω・´
Kとレジェールの蜜月は、冬を超えてもなお続いていた。
セッティングはコンセプトにBGのリガチャー、そしてレジェール シグニチャー。
サッカーはFCバルセロナにおけるメッシ・ネイマール・スアレスのトリオを彷彿とさせるような最強の組み合わせだ。ーKはそう、思っていた。
吹奏感にストレスがなく、息の通りが良い。簡単に鳴る。そして何より、リードを選ぶ必要がない。
しいて言うなら、実際試奏をして購入に至るわけだから、その時には当然選ぶ必要性がある。しかし、その時だけなのだ。一つ選んでしまったら、とりあえず3ヶ月ぐらいは大丈夫なのである。
無論、その時の自分の使用状況などにもよるし、レジェールにもやはり個体差がある為、それを上手く使い分けるというのもないわけではない。
しかし、レジェールは状態変化が少ない。
その絶対的な信頼は、揺らがなかった。
「音出ししなくても大体こんな感じって、もうわかってるからさ。なんていうか、阿吽の呼吸みたいな?ツーカーっていうの?」
「ツーカーってなんだよ。昔あった携帯会社かよ」
レジェールが突っ込んだ。そう、このぐらい日が経つとKのツッコミグセもどうやらうつるようだった。
「良いツッコミ。アナタは初めて買ったあの夏の日のレジェールじゃないのに。」
「K、あいつは・・・」
「知ってる。私が使いすぎてしまって・・・。随分と献身的だった。劣化してきたことにも気が付かず、いつの間に小さな亀裂が入ってしまった。それに気がついたときにはもう、出会った頃の私達じゃいられなくなったのよ。」
そう言うKの目は、薄っすらと赤くなっていた。
「俺は?三代目?」
「私をEXILE一族の長にでもする気? ちなみにあなたは四代目。」
「去年の夏から1年と2ヶ月ぐらいで4つか。14ヶ月で、・・・割る4だから、・・・」
一緒にいる時間が長いと、どうやら計算が苦手なKの性質までもがうつったようであった。
「3ヶ月に1本ってなところだろ? で、どう?俺ってなかなかタフだろ?」
そう言ってレジェールはタフさをアピールしながら、今日も不動のスタメンの座につく。これが、最近のレジェールのルーティーンである。
Kは彼をスタメンとして起用する。それが、声にはしないが絶対の信頼を示す、唯一の方法だった。
しかし、サッカー選手が怪我だの脱税だのでチームを離脱するように。
その黄金のトライアングルはいつまでも続かない。
トライアングルのバランスが崩れるきっかけ。
Kの場合、それはアルトではなくソプラノにあった。
「だから、俺は警告したはずだ。」
ケーンのリードAが言う。
「あれは、パンドラの箱なんだってばよ・・・!」
同じくケーンのリードBがナルトを引用しながら呟いた。
`・ω・´
野外でのコンサートの際のレジェールの安定性をソプラノでも手に入れたい、と思ったKは、ある日リペアついでに楽器店に行くことにした。
「すみません、ソプラノのレジェールを購入したいんですけども・・・」
Kは店員に話しかけた。すると、快い笑顔で
「かしこまりました。今お持ちしますね」
と答えた。
その楽器店の女性が持ってきたのは、4本。
どんな面々が揃っているのか・・・ ドキドキしていたKは、一本一本吹いていった。
ケーンのリードに比べ、レジェールは少し滑り易く、固定するのがやや難しい。リガチャーで固定しようと思うと、つるりと滑って調整、ということがしばしばある。
手先を少し緊張させながら、固定し、吹いていく。
そして。その中の1本が、言い放った。
「俺んとこ、こないか?」
おかしいな。むしろKが「うちにおいでよ」と言うべきところを、逆ナンというか、いや〜でも性別的にはナンパ、・・・しかし立場的には逆n・・・ ではあったものの、結局その綾小路翔を彷彿とさせる、しかし音色やコントロールの良さというバランスの整っている、なんだかギャップが激しいギャップ萌え系の1本を買っていった。
これでソプラノでもある程度の安定性を確保できる。
これで、ソプラノでも野外の本番だって怖くない。
若さというのは時に恐ろしいもので、こうなると周りがすっかり見えない。陽気な気分のまま、Kは帰路につくのであった。
まさかこのリードが、ソプラノだけじゃなくアルトでのレジェールとの蜜月をも終わらせるかもしれない等とは、全く考えもせずにー・・・!
次回、連続Blog小説「レジェール 〜そのリードは最強か」 第3話、ご期待ください。
〜この物語は個人的な主観を元にしたフィクションです。
実在の個人・団体とは一切関係がありません。
その証拠にマッカランなんて飲んだことないよッッ!!!!!!!! フィクションだから!!!!!!!!!!!
0 件のコメント:
コメントを投稿