2014年2月16日日曜日

MOTOAJITO- 『音楽』

ク: えーみなさんこんばんは、クリス・プペラーです。
ポッサロピールpresents モトアジト、開店です。
本日のゲストは、只今ソチ五輪堪能中、Kさんです。

K: よろしくお願いします〜。

ク: いや〜 羽生結弦選手、やりましたねぇ!

K: オリンピックで金メダルですからねー。しかも19歳ですからね。この先どうなっちゃうんですかねえ。

ク: あなたはアナタのこと心配してればいいんじゃない?

K: (・・・なんでこの人こういう事言うかなー。。。)


小澤征爾×武満徹 『音楽』


ク: さ、今日はちょっと前回の「次回予告」と内容異なるんですけども・・・
ひとつアジトにね、本を持ってきて頂いたんですけどー・・・ ははあ、ずいぶんとまた古い本を持ってきましたね。僕も読みました。


初版昭和59年(1984年)!はー!! アナタ何年生まれ?

K: 平成3年(1991年)ですね。

ク: うわぁもうなんだかヤだなー!!なんかキミ意外と若いんだねー!!そっか、そうだねー!!

K: なにがやねん!!!

ク: ていうかまあ、僕の親ぐらいの世代の方たち2人だからね。
(※小澤氏→1935年生まれ 武満氏→1930年生まれ)
キミから見たら説教されてるような気分なんじゃないの?

K: いやいやとんでもない。すごく興味深いですね。
それに説教って教えを説く、って書きますから。教えてもらってるんですよ。会ったこともない人に。いろいろ。それが面白い。

ク: ま、読書の醍醐味だよね。
何せ武満さんはもうすでに亡くなってるわけだし。(※1996年に亡くなっている)
この本の時にお二人は・・・ 49歳と54歳ですか。うーん、なるほどねえ。
今のあなたの親御さんぐらいってところなのかな。


得たもの、失ったもの


K: いろいろ耳が痛かったところが多くて。って聞いたわけじゃないから耳が痛いわけじゃないんですけど。放っておくとほとんどのページの端っこ折っちゃうので、ちゃんと理解して読むのに時間要りました。

ク: この2人の勉強した、あるいは活躍してた時代って、大体ではあるけど高度経済成長期とかそのへんでしょう。だから、日本で西洋音楽の教育が始まったのも呼んでる限りだと「わりと最近の事」のように感じてたんじゃないかな。

K: 西洋に追いつけ追い越せって話ですよね。

ク: あーた読んだからわかるでしょうが、要は国の教育の一環だったからね。西洋音楽。

K: 高度経済成長、って言ったじゃないですか。
その流れなのか、技術とかも進歩してきますよね。ソニーとかが、オーディオとか作り始めたりとか。
それでこの本の中で、「そのエンジニアたちは、本来僕ら(※小澤氏たち)が求めてるものと違うものを求めてるんじゃないだろうか」て言ってる。そしたら、小澤さんたちが大事にしている空気が益々失われるっていうか、失われた世界(感じ)が基礎にいまなってるのかもしれないな、と。
そのへん小澤さんとか、どう思ってるんですかね。

ク: それは、今現在、って事?

K: はい。
だって多分私は、もうその「失われるかもしれない」って言った後に生まれた人だから。その、小澤さんが失いたくなかったものを知らないわけですよ。
だから、ホントに、小澤さんが仮にじゃあうちの大学の指揮をしますってなって、彼が求めている音を再現しようと思っても、そもそも彼の持ってる感覚を再現できる耳がないのかもしれないな、って。


枯渇


ク: そのかわり、といっては何だけど、あなたの時代はずいぶん豊かじゃない?
生まれた時から、特に不自由したことなかったでしょ。これをやりたいのにモノや場所がないからやれない、みたいなさ。

K: ああ、多分なかったと思います。それがちょっとわからないぐらいだから、不自由した覚えはないように思いますね。

ク: なんて言えばいいのかなあ。んー。
CD欲しいけど買えないからラジオから流れてくるのを録音しようとしてテープ用意するけど途中で邪魔が入るみたいなさあ・・・

K: いや、それはある!! ていうか話逸れてる!!!
ていうか聞いてれば何にも困ってないみたいな事言ってるけど、そんなことはないですって!

ク: いやー、あるね!僕ある程度確信があるよ。 何せ君たちの世代をゆとりって付けた世代だと言ってもいいわけだし。
やっぱり恵まれてるんだよ。 それは勿論僕らの世代やもっと上の世代が頑張ったからっていうのもあるけどさ。
繰り返しになるけど、飢えとかないじゃん。 精神的にも、物質的にも。
僕は別にそれを良い・悪いで言いたいわけじゃなくて、ただ事実を見てそうだよねって結構思うわけ。

K: はあ。

ク: Kは香港とか行ってるじゃない? そこで見て思うことあるわけでしょ?

K: まあ、ハングリー精神とか、今の私世代の日本人が持ってるようで全然持ってないなみたいな、何か剥き出しのモノを感じますね。

ク: やっぱ、その感じはきっとないだろうし。
アナタはどこかでそれに気がついてるから、香港に面白みを感じるのかもしれないし、最近アナタのブームの韓国映画も、結局そういうところに惹かれているんじゃない?
まあ、もうこの本の時点で、小澤さんが北京に行って指揮をする話が出ていて、発展途上で真っ白で、ブラームスなんて大人数のオケなのに3人しかやったことがない。
でもがむしゃらで、それが「面白い」って言うんだよ。だからもうこの時点で、日本の音楽業界にはない面白さとかKの言う「剥き出し」の何かが北京にはあって。「渇望」、なんだろうね
豊かで満たされてたら、多分人間「渇望」なんて言葉思いつかないよ。

K: それが結局、小澤さんだったか武満さんだったかが言う「日本の演奏家にプライドがない」みたいな話につながってくる。

ク: うん?

K: 「リハで出来なくても、演奏会までにできればいい」みたいな。それに対してここで警鐘を鳴らしてるんだけど、でも実際今音大に自分が行ってて、これ、あるんですよ。ていうかむしろ自己批判になるけど、この気持が「普通」になってる。どんどん何か小さくなってく。

ク: どうなの?それ。

K: それだったら、じゃあ練習室でやってらっしゃい、それ一人でも出来るんでしょ、って話なわけじゃないですか。
でももっと出来るんですよってことを誇示するかのように、「ごめん今日ちょっと練習できてなくってさあ」みたいなことを言う。出来てもないのに、大人数でのリハの時。
なんだろう、プライドがないわけじゃないからそういう事言うんでしょうけど、ちょっとそれはここで彼らが求めたい「プライド」とは違いますね。

ク: 別に彼らが求める像になる必要はないと思うのだけど。

K: そうなんですけどね。 そうなんですけど、でもやっぱ今のまんまじゃマズイなという思いは私にもあるんですよ。

ク: でもそのままズルズルと行きそうになっている。 アナタも共犯者かもしれないね。

K: それ、今年の流行語大賞かな。

ク: ・・・ちょっとこのくだり、不謹慎かもね。笑 言いたいことは伝わったけど。


音楽とはパーソナルなもの


K: 最初の方の、失われるものの話の続きなんですけど。

ク: はい。

K: どちらかが言うんですよ。「感受性が豊かだったとしても、自分が積極的になれないならモノを見極める力は失われる」っていうような事を。
で、そうなっちゃうと、この本の中で語られている音楽の解釈について?の話で「極めて不正確に、その人なりに、その人の生活環境や経験を通して作曲家の音楽を再演する。それが感動になる」って言ってるけれど、なんだろう。
まあやっぱ、積極的になっていかないと、その曲に対する解釈も小さくなっていくっていうか、せせこましくなるっていうか。

ク: 「せせこましく」。笑

K: 別に、便利になることが積極性を失わせるとか人間を小さくさせるとは思わないんですけど、

ク: 世代ですね。

K: かもしれません。 それでも、うーん、なんだろう、でもやっぱりそういう手続きの少なさが、結局後々違う形で出てくるのかなと思わなくはないんですよ。

ク: 「手続き」ね。
『坊っちゃん』のくだりで出てきたやつですね。詳しくは読んでいただくとしてかいつまんで言うと、小澤さんが漱石の『坊っちゃん』を読め、って言われて読もうとするんだけど、まあめんどくさくなっちゃって映画やってるっていうから見に行っちゃうんだよね。
それで済ませようとするんだけど、結局バレて(笑)、ちゃんと本を買いに行くっていうところから、見つけたら字を読む知識を持ち、それを取り入れるという手続きをちゃんとしなさいっていう話だった。
ってやつでしょ?

K: うん、大体。笑
要は、映画だとキャストがいて、監督がいて脚本家がいてって沢山の人間が間にはさまってるんだけど、本は作者と読者の1対1のガチンコ勝負だから。だから解釈もいろいろあるし。で、それが大事だって話。ーだったと思う。笑
別に映画が悪者だとも言わないし、むしろ好きだけど、でもやっぱりそうだなあ、すぐになんでも同じもの(解釈)を求めたりっていうのにはどうかなあと思って。
よくあるじゃないですか、「このキャストは絶対違う!」とか。 そんなものは、映画を作る側の人とか批評家ぐらいまでが考えればいい話で、お客さんは受け入れられないなら原作の本だけ読んでればいいじゃない。それでアナタの解釈を大事にすればいいんじゃないですか、って思わなくもないわけです。

ク: 思ってんのね。 結構痛烈なこと言うんだねえ。

K: で、思うのは、
結局作曲家が作った音楽を演奏するって、その作者との1対1の対話であり、真剣交際なわけじゃないですか。

ク: バレンタイン終わりましたよ。

K: いや、音楽家は1年中ある意味バレンタインですよ。四六時中仲良くなりたいし、その相手を知りたい。一歩間違えば浮気症の激しいストーカーです。
そしてその対話の結果を演奏って形で外にだすわけですけど、それを音楽会!!ドーン!!って、しかもプロならそれをお金取ってやるわけです。
それってどうなのかなあ、もうちょっとせせこましくやってもいいんじゃないかと思うんですけれど、やっぱり素敵なモノがあったらみんなに「ねえちょっと聞いて」ってやりたいじゃないですか。
しかもその紹介してもらったものが良かったって他の人が思ってもらえたらしめたもの、っていうか。

ク: カリスマバイヤーみたいなもんかな。

K: 近からず遠からず?笑
まあその、カリスマバイヤーの活動を支えるべく、支援の形でお金が発生したりする。

ク: でもカリスマバイヤーは、ずっと同じもの紹介してるだけじゃダメですよ。って僕は思っていて。あたりまえだけど。
常に何か新しいもの、あるいはまだなかったけど、「そうそうこんなもの探してたんだよ〜」というのを紹介できる人じゃないかなあって。潜在需要ってやつね。
じゃなかったら別にそのバイヤーさんから買う理由もないしね。
同じものを他の人からも紹介してもらえる、ってまあ・・・ 金太郎飴みたいなもんだよね。そしたらそれこそ個性がない。面白くないし。
僕は、小澤さんかな?の言った、「きわめて不正確に」っていうのが面白いねって思う。安直に答えを求めない感じが。


反抗


K: で、この2人の言うこと、すごくよくわかるし、今の私にないものとかも詰まりまくってるわけですが。

ク: だってあんた当時のこの人達の半分も生きてないもん。

K: (・・・うるさいなあw) でも、やっぱりこれも世代なのかな。反抗したくなるというか、異を唱えたいと思うこともありますよ。

ク: へえ、例えば?

K: 武満さんのお子さんが高校生の時に交換留学する話で。

ク: うん。

K: そのまま子供の方は残って、(米国で)大学進学したいっていうけど、それを武満さんが頑なに拒否する。
これは、なんていうか昔の人だな、っていうか、私の考えとは相反するな、というか。
たまたま武満さんと意見が異なるだけで、もしかしたら(SONYの)故盛田さんだとむしろそうしなさい、と言うのかもしれないけれど。
いろいろあったはずなのですが、結局ちゃんと日本を知らないといけないよ、みたいな理由で帰ってくるように説得してたと思うんですね。

ク: ・・・だったかな。

K: でも、これは私の意見です。
海外にいるからこそ日本のことを知ろうとか思ったりもするわけで。矛盾してるんですけど。
同時にやっぱ嫌だなと思うところも見えてくるわけですが、そうやって比較することでしか自分をわかることは出来ないと思うんですよ。
ただ、この考え方って、やっぱなんていうか・・・

ク: 「育った環境とかがやっぱりまるっきり違うかも」って?

K: 思わなくもないですよ。
あとどんどん東京に何もかもが集中していて、ローカリティを生かしてないって話もちょっと違うかなと思う。
逆に、東京に集まれば集まるほど、最近のゆるきゃらブームみたいなのとかみたいにローカル色が色濃く出てくるんじゃないかなとか。振り子の原理みたいな。

ク: 時代は変わるからね。 むしろ、この人達が言ってることが全部正しかったら、それはノストラダムスかもしれない。

K: 古いな。


「音楽に取り憑かれている」ーまとめ


ク: この本を読んで、最近小澤さんが体調を崩されたりしてステージを降板したりするけど、それでも復帰しようと何度も試みる理由が僕はわかったかな。

K: 取り憑かれてるのかな。

ク: 表現がなんともなーw
ていうか、彼のその情熱を「取り憑かれてる」って言っちゃうあたりが

K: 世代だ、とか言いたいんですかw

ク: うーん、まあ。

K: 別に私はこの世代の人達、あるいはこの世代の音楽家みんなが彼らふたりみたいな思想を持ってるとは思わないんです。
だから思うのは、私達の世代みんなが私と同じ考えだと思わないでいただきたい!!世代論論者!!!

ク: そりゃ、「みんな違ってみんないい」ですからね。
でも僕が思うのは、渇望せよ!!とは言わないけれど、やっぱ恵まれてるからね。世代的に、君たちは。なんかもっと血なまぐさい感じとか見てみたい気もするんだよね〜。

K: 出た、世代。世代論論者代表にしてやろうか。

ク: さて、最後に何か一言ありますか?

K: まあ、是非読んで頂きたい、って。
こんな論評とも言えない、ただの居酒屋で隣のテーブルでしゃべってるの盗み聞きみたいな感じで読書したと思っちゃダメですよ。

ク: 誰も思ってないでしょww まあでも確かに、僕からも是非、ご一読下さい。
以上、MOTOAJITO, 本日は音大生のKさんと僕クリス・プペラーが、書籍『音楽』について語り合いました。ありがとうございました。

K: 最後までありがとうございました。